《The Fingers レア音源 2 》

GS時代  '68〜'69
 

  ザ・フィンガーズは卒業が間近になるとプロ入りするか、就職してサラリーマンになるか意見が分かれ、成毛、高橋、蓮見の三人がプロ入りする事になった。
そして'67年12月、某音楽事務所と専属契約を交わしたのだが、契約書にサインした直後に事務所の女社長は成毛に向かって「あんたギター得意だそうだけど、ギターなんか弾くんじゃないわよ。ピアノかオルガン弾きなさい。」‥と言った。
驚いた成毛が「何故ですか?」‥と訊くと、周りに居たマネージャー連が「社長がおっしゃった事に口答えするんじゃない!」‥と怒鳴りつけ、以後成毛はギターを弾かしてもらえなくなる。

 しかしギターでプロになるつもりだった成毛はピアノが得意だったわけでもなく、小学校一年の時に「子供のバイエル」等を一年間習わされた事はあったが、お稽古がイヤで逃げまわっていたので何も覚えていない。
と言って、契約書にサインしてしまった後ではどうにもならず、やけくそで「よ〜し、こうなったらキーボードでも一流になってやる!」‥とカーメン・キャバレロ、ロジャー・ウィリアムス、ジミー・スミス等のレコードを買い込み、譜面は読めないので自分の耳だけを頼り、ベンチャーズをコピーしてギターの弾き方を覚えた時と同じように全くの独学でピアノとオルガンの練習を始めた。

 そしてザ・ディメンションズのリードギターだったシー・ユー・チェンがベースで加入する事になり、松本幸三がドラムで加入し、'68年4月に「新生ザ・フィンガーズ」としてキングレコードからデビューした。

 レコード会社は「ソフトロックの貴公子」というフレコミで蓮見とシー・ユーに日本語の歌を唄わせたが、アメリカ育ちの蓮見も,アメリカン・スクール出身のシー・ユーも日本語の歌など唄った事は無く、慣れない日本語の歌詞にぎごちなさばかりが目立ち、又も知り合いには聴かれたくないレコードが発売された。

 唄も演奏も不馴れでタドタドしいザ・フィンガーズはジャズ喫茶のお客に見向きもされず、客席はいつも閑散とし、GSの人気投票では200位にも入らなかった。

'69年1月、蓮見が脱退する事になり、代わりに日本語の歌でも唄えるクロード芹沢がヴォーカルで入ったが、状況は変わらなかった。



     最後のザ・フィンガーズ(第六期)
        左からシー・ユー、松本、クロード、高橋,成毛

                     
 
 
BLACK SHEEP.mp3 
(5:36 2.5MB)

 

 ギターを弾く事を禁止された成毛はイタリアのFARFISAのオルガンを買い、ヴァニラ・ファッジ、ドアーズ、プロコル・ハルム等をお手本にオルガンでのサウンド作りを工夫した。  

 


FARFISAのオルガンを弾く成毛 

 

 BLACK SHEEPはこの頃のザ・フィンガーズがジャズ喫茶などでいつも演奏していた代表的な曲で、後にフライド・エッグのサウンドのルーツにもなった。
この時のメンバーは‥
  シー・ユー・チェン  Vo. B.
  クロード芹沢     Vo.
  成毛 滋       Org.
  高橋信之       G. Cho.
  松本幸三       Drs.
‥であった。
 ベースでシンコペーションを弾きながら唄うシー・ユーを見て他のバンドは「スゲェなあいつ!」‥と舌を巻いた。シー・ユーは元々リードギターだったので、普通のベーシストにはできないような事ができたのである。
殆どプログレ・バンドという感じのザ・フィンガーズは共演したバンドには好評だったがお客には全く受けず、ザ・フィンガーズがステージに上がるとジャズ喫茶の客席はカラッポになり、暇を持て余したウェイターが「缶蹴り」をしていたという伝説まである。
 
 
 
CONFUSION.mp3 
(4:34 2.1MB)

 '69年6月、全く売れないザ・フィンガーズに見切りをつけた所属事務所は解散、解雇を決定した。解散が決まっても既に入っていた仕事はこなさなければならず、ザ・フィンガーズは残務整理をする事になる。
しかし解散が決まった事で成毛はギターを弾けるようになり、ジャズ喫茶での第三ステージは「ヴァニラ・クリーム」と称してシー・ユー・チェン(Vo. B.)、松本幸三(Drs.)と三人で演奏し、高橋とクロードはタンバリンとマラカス専従になった。  

  

     

VANILLA CREAM
        左から成毛、クロード、松本、高橋、シー・ユー

  
「CONFUSION」はこのヴァニラ・クリームでのシー・ユー・チェンのオリジナルである。

 成毛とシー・ユーは赤坂のパシャクラブに出演していたイギリスバンド「CLINIC」をお手本に最新の奏法を研究し、ギターのストラップをはずして垂直に立てて弾いたり、マイク・スタンドにこすりつけて弾いたりした。しかし、この時はまだギターのリスト・ヴィブラート(弦を押さえる方の手でかけるヴィブラート)を知らなくてアームを使っていたので音が伸びず、成毛は「なんか違うなぁ?」‥と悩みながら弾いていた。但し、ファズやディストーションの類いは一切使わなかった。
又、右手でオルガン、左手でギターをハンマリングで弾いてヴァニラ・ファッジ、ディープ・パープル‥等の曲を演奏した。これが後にストロベリー・パスで役に立つ事になる。  

      

 


右手でオルガン,左手でギターを弾いている成毛
        (オルガンは対バンドのもの)


BIOGRAPHY

《The Fingers レア音源 1 》